
長寿命化を阻む障壁
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既存住宅流通市場の築年数主義
既存住宅は土地と建物が一体となり価格を構成しています。日本の住宅評価は、過去の長い地価上昇の中で、土地価格のみが重視され、建物部分の評価はなおざりにされてきた経緯があります。そこでは、住宅評価が単なる経過年数である「築年数」で評価され、通常の木造住宅では、20年で残存価格10%となっています。悠に50年から60年はもつ、現在の新築木造住宅にはそぐわないものとなっています。
金融機関の既存住宅における担保評価の低さも築年数主義を定着させた要因といえます。
住宅価値をより精緻に査定すると期待される不動産鑑定評価は、通常の住宅取引に活用されることは希少といえます。
取引事例主義は、一見すると市場を反映しているともいえますが、住宅の性能が高まり、使用価値が既存のものよりはるかに長いスパンの住宅には、不適であるといえます。
また、長寿命化・既存住宅の流通増に対する世の中のニーズの低さが、現行の「評価方法」「評価基準」を形成しているという側面もあることに留意する必要があります。 |
30年耐久消費財の概念の固定化
住宅評価における築年数主義の慣行は、国民の意識に浸透し、そこでは既存住宅の評価をする際に、住宅のもつ性能・使用価値を軽視してきました。その結果、住宅=30年耐久消費財という技術的実態と乖離した一律な考え方が固定しています。
また一方で、既存住宅市場の未発達により、住生活のステップアップを図る手段としては、新築住宅に大きく依存せざるを得なかったという点もあります。
そうしたことで、新築住宅志向が強くなり、住宅を大切に長くかつ使い廻すという意識が、希薄になってきたといえます。 |
築年数主義評価にかわる評価物差しの未整備→既存住宅性能表示制度の未活用
既存住宅の性能を目視により評価しようという既存住宅性能表示制度も、今ひとつ活用されていません。従来の築年数主義の評価が大勢を占める中では、単なる安心材料として取引の補佐役にすぎないのです。建物評価において、築年数主義すらなく土地評価主義の場合さえあります。
このような現状は、築年数主義に代わる住宅の使用価値・性能を正しく評価する物差し、しかも長期にわたって使っていける物差しが整備されていないこともその一因といえます。 |
資産価値向上のための点検・維持管理インセンティブの弱さ
住宅の寿命はその維持管理・適切なメンテナンスに大きく依存します。維持管理・リモデルに対する評価が欠如しているのも問題です。
アメリカでは、「実質築年数」という概念で、維持管理の努力で耐用年数も変化するという評価尺度をもっています。例えば、築30年の住宅については、アメリカでは新しい屋根材仕上げ・外装塗装等がなされていれば、1割減価ですが、日本では、ほぼ一律に9割減価(残存価格は1割)とみなされます。
住宅の資産価値向上のための点検・維持管理・リモデルの努力が、資産価値評価に反映されず、メリットのないことが、住宅の長寿命化を阻む障害となっています。 |
マンションの長寿命化を阻む問題
現行の区分所有法は、マンションの長寿命化を積極的に推進する制度を有していません。マンションの長寿命化のためには、マンションの基礎的・中核部分は長期間にわたり維持しつつ、それ以外の部分は、改築・増築・減築していく必要があると思われます。例えば、既存の建物の利便性を高めるために、同一敷地内に共用部分となる建物や専有部分を含む建物を新築または増築する必要性や、共用部分の一部を専有部分化したり、逆に専有部分の一部を共用部分化する必要性が、建物の経年に伴って生じうると思われます。
しかし、現行の区分所有法は、区分所有者全員の合意によらない制度としては、既存の建物の管理としての変更(例えば、階段室のエレベータ室への変更の場合、区分所有者及び議決権の各3/4以上の特別多数決議を必要とする。)を認めるにとどまり、上記のような改築・増築・減築は認められていない。したがって、建物の長寿命化を図りつつ、多くの区分所有者の要求に応じて建物を積極的に改良していく仕組みが欠落しており、結局のところ、現行制度の下では既存の建物を取り壊して新たな建物に建て替える方向を選択せざるをえません。(これを「建替え原則主義」ないし「建替え至上主義」と名付けたい)。しかし、現実を直視した場合には、特に区分所有者の費用負担の点から、建替え決議成立のための要件である区分所有者の4/5以上の賛成が調うことは、一般的にはかなり困難であると思われます。
また、このような「建替え原則主義」の下では、短寿命を想定したマンションが市場に多く供給されることになります(現実にこの点は否定できないと思われます)。
以上のような現行の区分所有法制の下では、一方では、長寿命を予定するマンションは供給されにくく、他方では、これまでに供給されたマンションの長寿命化を阻むことになると考えます。
| 長寿化障害要因と短寿命実態は鶏と卵のような関係。現状の制度と長年にわたって固定概念を墨守する限り、鶏と卵の関係を断ち切った、住宅の長寿命化は望めない。能動的な政策的誘導が必要である。 |
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